子育て支援の現場に携わる方々、子育て支援に関する研究をしている方々に届けたい、社会問題化する児童虐待の予防に役立つ、不適切な養育の世代間連鎖に関する知見が提示されている。不適切な養育を受けて育ち、自分の親との関係に葛藤を抱えながら子育てに向き合う母親のありようを捉えた研究報告である。不適切な養育の世代間連鎖に関わる理論的背景を概観し、母親の幼少期の被養育経験と現在の養育態度、愛着スタイルと虐待心性を問う質問紙調査を様々な角度から検討している。また、不適切な被養育経験を持つ母親の縦断インタビューデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析し、母親の困難感と変容プロセスを浮き彫りにしている。さらに、心理療法による変容過程の考察に加え、不適切な被養育経験を持つ母親特有の育児困難感の概念化や心理的支援の視点を提示しており、子育て支援の実践と研究に役立つ内容となっている。